トレーサビリティ体系図の必要性について

トレーサビリティは日本語に訳すと追跡可能性になります。最近では食品加工業で使われることが多い言葉で、原料となる動物や植物まで元をたどれるという意味になります。誰がどのように原材料を生産し、加工し販売したかのルートを明らかにすることで、食品の安全性を確保することができます。トレーサビリティという言葉は計測器の世界でも重要な意味を持っています。長さや重さをはじめ、電力や時間や光度や磁力など、計測するものの種類は問いません。計測器の正確性が曖昧なままでは、品質管理も技術の改善も実現不可能になります。計測器は標準器によって校正され、標準器はさらに正確な標準器によって校正されます。この経路を示したチャートがトレーサビリティ体系図と呼ばれています。

国家標準にまでトレースできること

日本の計量法では国家計量標準として、特定の標準器が定められています。これが最も正確な計測器と言えますが、日本にひとつしかないため、使える機会は限定されています。この国家計量標準をもとに二次標準器が校正され、二次標準器をもとに参照標準器や実用標準器が校正されます。一般的なはかりやものさしは、参照標準器や実用標準器をもとに校正されています。こうした階層構造を図にしたものがトレーサビリティ体系図です。この図をたどっていけば、最終的には国家標準や国際標準にたどり着くことができます。もし途中で途切れていれば、それはトレーサブルではないということになります。国内外のさまざまな規格を満たすためには、国家標準や国際標準にトレーサブルな測定器を用いる必要があります。

測定の妥当性と公正中立性を証明

トレーサビリティは計測器の不確かさも含めた、測定の妥当性を証明するものと言えます。トレーサビリティが確保された測定や校正は、公正中立であるとともに、技術的にも一定の水準を満たしていることが期待できます。日本には校正事業者登録制度があり、登録事業者でなくても校正業務は行なえますが、国家標準へのトレーサビリティは確保されません。ISO9001などを取得するためには、トレーサビリティの確保が求められます。このとき審査機関のロゴが入った校正証明書を提出すれば、原則としてトレーサビリティ体系図は必要ありません。しかし取引相手によっては、より詳細なトレーサビリティの証明を要求されることがあります。そのようなときは、トレーサビリティ体系図を作成する必要があります。